1996年夏季号 NO.2
●ICCA

 レスポンシブル・ケアは国際的な活動です。レスポンシブル・ケアに取り組んでいる各国の化学工業協会を紹介します。
ICCA(International Council of Chemical Association)国際化学工業協会協議会のメンバー協会は、

1.CEFIC(Conseil Europeen de I'Industrie Chimique/European Chemical Industry Council)

  ※名称変更により"Federation"がなくなったが略称は"CEFIC"のまま
欧州化学工業連盟メンバー
1)CIA(Chemical Industries Association):英国化学工業協会
2)Federchimica(Federzione Nationale dell'Industria Chimica):イタリア化学工業協会
3)UIC(Union des Industries Chimiques):フランス化学工業協会
4)VCI(Verband der Chemischen Industre e.V):ドイツ化学工業協会
5)その他
FCIO(オーストリア)、FIC/FCN(ベルギー)、FDKI(デンマーク)、KTRY(フィンランド)、Hellenic Association of Chemical Industries(ギリシャ)、IPCMF(アイルランド)、VNCI(オランダ)、PIL(ノルウェー)、APEQ(ポルトガル)、FEIQUE(スペイン)、KEMIKONTORTE(スエーデン)、SGCI/SSIC(スイス)、SCHP(チェコ)、MAVESZ(ハンガリー)、PIPC(スロバキア)、KSD(トルコ)

2.アメリカ
1)ANIQ(Asociacion Nacional de Industria Quimica):メキシコ化学工業協会
2)CCPA(the Canadian Chemical Producer's Association):カナダ化学製造業者協会
3)CMA(Chemical Manufacturers Association):米国化学製造業者協会

3.オーストラリア
PACIA(Plastics and Chemicals Industries Association Inc.):オーストラリアプラスチック・化学工業協会

4.日本
(社)日本化学工業協会
 その他、ICCA未加入でレスポンシブル・ケアを実施している国はアルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ベネズエラ、インド、インドネシア、韓国、香港、マレーシア、ニュージーランド、ポーランド、ジンバヴエ、南アフリカ。

   


   

1996年秋季号 NO.3
●PRTR

環境汚染物質排出・移動登録制度
PRTRとは「有害な化学物質を生産、または使用している企業が、その生産量または使用量、環境への排出量、廃棄物に関する情報等を登録(届出)する制度」
 1996年2月OECD環境相会議でPRTRの導入を加盟26ケ国の政府に勧告した。
 そこでOECDによる制度導入のガイダンスを基にPRTR制度を設立、実施し、かつその結果を公衆利用可能とすることを勧告しており、この制度により環境への潜在的に有害な排出、および移転の源および量が明らかとなり、人および環境への潜在的危険性の確認と評価に役立つ情報が社会に提供されるようになることを期待している。
 この制度はアジェンダ21第19章(1992年リオサミット)の「有害かつ危険な製品の不法な国際取引の防止を含む有害化学物質の環境上適切な管理」の実行策としてOECD内で検討されてきたものであり、米国を始め各国により様々になされてきた同種の取り組みを国際的に歩調をあわせたものとして一層推進することが目的。
 勧告に強制力はないが、加盟国は1999年に、その取り組みをOECDに報告することとなっているため各国は法律で義務付けるか、事業者の自主的取り組みにゆだねるか等、それぞれに制度の仕組みを検討するものと思われる。

   

各国の取組み事例

 

米国

カナダ

英国

オランダ

制度名

TRI

NPRI

CRI

IEI

開始年

1986

1993

1992

1990

対象物質数

約650

約180

約400

約60

公表方式

データベース化
(施設毎)

データベース化
(施設毎)

データベース化
(物質、地域別集計データ)

請求により公開

   


   

1996年冬季号 NO.4
●MSDS

Material Safety Data Sheet
化学物質安全性データシート
 MSDSとは化学製品を安全に取扱うために必要な情報を提供し、化学製品に係わる事故を未然に防止することを目的に、化学製品の供給事業者から取扱事業者に、該当化学製品ごとに配布する説明書。
 このMSDS制度は労働省告示「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針(92年7月)」、厚生省・通商産業省告示「化学物質の安全性に係る情報提供に関する指針(93年3月)」により発足しましたが、告示は基本的な対象化学物質、記載情報を示唆するのみで、実施は事業者の自主的活動に委ねられています。
 日本化学工業協会では、この制度は化学物質安全管理の基礎をなすものであり、かつレスポンシブル・ケアの重要課題であると認識し、MSDS作成指針をまとめ、普及に努めています。欧米においても、同様の制度があります(米国:MSDS、欧州:SDS)。しかし日本も含め、それらの制度はそれぞれの国内・域内のみを対象としているため、輸出入の際はそれぞれに再度作成する必要があります。今後、これらの制度の共通化が国際的課題です。また東南アジアには、この制度はまだ十分には普及しておらず、これも今後の課題です。

対象物質群:爆発性物質、高圧ガス、引火性液体、可燃性固形、自然発火性物質、禁水性物質、酸化性物質、自己反応性物質、急性毒性物質、腐食性物質
記載項目:製造者氏名・住所、物質名、危険有害性分類、応急措置、事故時措置(火災、漏洩)、廃棄の注意、輸送の注意、物理/化学的性質、危険性情報、有害性情報、環境影響情報他

   

   

●イエローカード

化学製品の輸送人が、輸送化学製品の事故時に迅速な対応を図ることができるように、事故時の措置・連絡通報事項等を化学製品毎に記載した黄色いカード。
 この制度は日本化学工業協会作成の「物流管理指針(95年3月)」に基づきスタートしたもので、MSDSと同じ精神の制度であり、かつMSDSを物流に応用したものと言えます。

対象物質群:MSDSと同一
記載項目:品名、関係法規対応、有害性・毒性、事故時の応急措置、緊急通報・連絡先、災害拡大防止措置、保護具他

   


   

1997年春季号 NO.5

 「化学物質過敏症」とか「シックハウス症候群(新築症)」という言葉は、新築家屋に入居時に、気分が悪くなるなどの症状を表すものとして95年頃よりマスコミで報道されるようになりました。しかし正確にはそれらの語の意味は異なります。

●化学物質過敏症

 北里大学医学部眼科・石川哲教授らが命名したもので、一般の人には感じないごく微量の化学物質によって発症し、頭痛、冷え、せき、喘息、手足のふるえなどの主に自律神経系の症状が現れることを言います。
 過去に一時に多量の化学物質に曝露された人が、その化学物質への適応能力を超えてしまうとその後はごく微量の化学物質に対して発症すると説明しています。
 しかし科学的客観的な証明がしにくいことから、国内外とも現在病名としては認められていません。

   

   

●シックハウス症候群(新築症)

 新築や改築を行った室内は建材、塗料、防蟻剤、防虫剤などから揮発する化学物質の濃度が異常に高くなる場合があります。特に高気密化した室内に認められます。
 このような室内に立ち入ると、前述の「化学物質過敏症」と似たような症状を呈します。これを「シックハウス症候群」と呼んでいます。
 原因物質は様々であり、特定することは困難ですが、とくに合板の接着剤に起因するホルムアルデヒドや塗料の有機溶剤などがあげられています。
 日本化学工業協会は、96年に、これら現象の実態把握と共にその原因、対策等について研究を実施し、近く、その結果を調査レポートとして発行の予定です。

   


   

1997年秋季号 NO.7
●エンドクリン問題

 昨年3月に米国で出版された"OUR STOLEN FUTURE(奪われた我々の未来)"が、それまでの各種の調査報告書、試験報告書、インタビュー等を基に「環境中に放出された、DDTやPCB等のいわゆる残留性塩素化合物等に代表される合成化学物質の中に、天然ホルモンと類似の作用をするものがあり、これが野生生物やヒトの内分泌(英語名:エンドクリン※、通称名:ホルモン ※代表的なものとして、エストロゲン(女性ホルモン)、アンドロゲン(男性ホルモン)等があります。)作用を撹乱するため、野生生物に起こっている生殖異常等の深刻な影響が人間にも及んでいる」という"説"を主張。基礎的且つ科学的研究の実施と早急な対策を講ずるよう、強く警告を発したことから急速に世界的に関心が高まったもの。
 欧米では環境学者、社会学者、動物学者、大学や企業等の研究者を含め、この説に対して支持論と否定論がありますが、結論を下すには未だ十分な科学的根拠があるわけではなく、今後の調査・研究を待つというのが大勢であります。
 現在、日本(日化協)も、また、国際的にも、産・官・学挙げて協力関係を築きながら、事実関係の解明に向けた調査・研究を実施しつつあるところです。

   


   

1997年冬季号 NO.8
●ダイオキシン類

 1960年代、ダイオキシン類は、ベトナム戦争で使用された枯葉剤(2,4,5-T、2,4-D)中の不純物として散布され、その後、催奇形性問題が社会的にも大きな関心を集めました。さらに1976年に起こったイタリアのセベソでの農薬工場の爆発事故は周辺地域に多大の被害をもたらし、後処理問題からバーセル条約(廃棄物の越境移動禁止条約)の制定のきっかけともなりました。
 この物質の毒性は急性毒性、催奇形性、免疫毒性、生殖毒性等多岐にわたる報告が発表されており、1997年2月に世界保健機構(WHO)から人に対して発癌性があることが正式に規定されています。
 ダイオキシン類は、物の燃焼過程で非意図的に生成される化学物質であり、我が国のダイオキシンの総排出量の8割以上は廃棄物焼却施設から排出とされ、その対策が急務となっています。本年8月30日に廃棄物焼却炉の構造基準、維持管理基準等の政省令が公布されています。
 ダイオキシンとは、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)の通称であり、これにポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)を加えてダイオキシン類としてよく扱われます。ダイオキシン類には多くの異性体が存在します。ダイオキシン類の毒性は異性体ごとに異なるため、異性体の中で最強の毒性を有する2,3,7,8-テトラ塩化ジベンゾパラジオキシン(2,3,7,8-T4CDD)の毒性を1としたときの他の異性体の相対的な毒性を毒性等価係数(TEF)で示し、これを用いて異性体の毒性を2,3,7,8-T4CDDの等量(TEQ)として換算します。TEFについては、毒性評価に係る知見の集積により、改正が続けられていますが、現在NATO諸国の共同研究に基づく国際毒性等価係数を用いることが多く、2,3,7,8の位置に塩素が存在するダイオキシン類(17種類)についてTEF値が提示されており、それ以外の異性体はTEF値を0としています。

    

 
Copyright 2000. Japan Responsible care council. All right reserved.