PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)とは「有害性のおそれのある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し、集計し、公表する仕組み」のことです。
 この制度では、対象物質の環境への排出・移動の源・量を明らかにすることで、人および環境への潜在的危険性を確認することや危険性評価に役立つ情報が社会に提供されることを期待しています。これまでに主要各国では以下のような取り組みを行っています。
  
  
各国の取り組み事例
国 名 制 度 対象物質 対象施設 届出されたデータの扱い 開始時期
アメリカ TRI
(有害物質排出目録)
約620物質 製造業等
(業種指定。従業員数及び年間取扱量で裾切り)
個別データ及び集計データを公表 1986年
カナダ NPRI
(全国汚染物質排出
目録)
268物質 製造業等
(業種指定。従業員数及び年間取扱量で裾切り)
個別データ及び集計データを公表 1993年
オーストラリア NPI
(全国汚染物質目録)
90物質 製造業
(年間取扱量で裾切り)
個別データ及び集計データを公表 1998年
イギリス PI
(汚染目録)
約150物質 製造業等
(業種を列挙。年間排出量で裾切り)
個別データを公表 1990年
オランダ IEI
(個別排出目録システム)
約170物質 環境管理法上の許可が必要とされる施設等 集計データを公表
(個別データも別途閲覧可能)
1974年
日本 PRTR
(環境汚染物質排出・移動登録)
354物質 製造業等
(業種を列挙。従業員数及び年間取扱量で裾切り)
集計データを公表
(個別データ は請求により開示)
2001年4月より排出量の把握及び推計開始
(PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック〜平成12年度パイロット事業の結果から〜〔環境省〕より)
  
  
 日本は1999年7月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質管理促進法)が公布され、2000年3月30日に施行となりました。法で定められた354化学物質について、2001年度から数量の把握が開始されており、2002年度からデータの届出と行政による公表が行われます。
 JRCCでは、従来から化学業界が社会から信頼を得るためには有害物質の環境への排出の削減は必須と考え、漏洩防止、回収・リサイクル率の向上、代替物質への転換等を積極的に推進してきました。化学物質管理促進法で定められた化学物質はもとより、日化協が独自に定めた化学物質についても排出・移動量を調査把握しています。
  
  
日化協PRTR取り組みの経緯
1992年度 ・諸外国のPRTR制度調査
・13物質のパイロット調査
1993年度 ・28物質のパイロット調査
1994年度 ・調査指針 ・算定要領の作成
1995年度 ・55物質の排出量調査
・(1997年1月)化学品審議会にて43物質の結果公表
1996年度 ・151物質の排出量調査
・(1998年1月)化学品審議会にて103物質の結果公表
1997年度 ・286物質の排出量調査
・(1999年4月)化学品審議会にて192物質の結果公表
1998年度 ・284物質の排出量調査
・(2000年4月)化学品審議会にて200物質の結果公表
・都道府県別に排出量の多い上位5物質についても初めて公表
1999年度 ・284物質の排出量調査
2000年度 ・日化協284物質とPRTR法の354物質の双方の排出量調査

PRTR調査結果
物質名 排出量 トン/年 事業場外処理量 トン/年 取扱
会社数
大気 水域 土壌 合計 移動量 リサイクル量 合計
トルエン 5,640 196 0 5,836 4,700 9,160 13,860 67
ジクロロメタン 4,030 7 0 4,037 928 540 1,468 47
クロロメタン 2,730 20 0 2,750 50 0 50 26
二硫化炭素 2,010 7 0 2,017 0 0 0 10
酢酸ビニル 1,610 48 0 1,658 2,450 738 3,188 33
キシレン 1,570 33 0 1,603 2,250 2,860 5,110 66
ジメチルホルムアミド 1,430 156 0 1,586 1,250 1,680 2,930 44
HCFC-142b 1,560 0 0 1,560 0 0 0 6
スチレン 1,350 188 0 1,538 1,210 1,060 2,270 48
HCFC-22 1,340 73 0 1,413 3 0 3 10
  • 上記表は、2000年度のJRCC会員の排出量、事業場外処理量を政令指定物質で、排出量の多い上位10物質についてまとめたものです。
  • 排出量の内訳は、大気への排出が大部分を占めており、大気への排出量をいかに削減するかが今後の課題です。また、事業場外処理量のうち、リサイクルの割合が50%を超える物質も含まれており、各社のリサイクルへの取り組みが十分進んでいることが確認できました。
  • JRCCは本年初めてこのまとめを行いましたが、今後も継続し、化学物質の環境への排出抑制を進めていきます。
  • また、社会とのコミュニケーションも推進し、より一層『透明性の高い化学産業』を構築することに努めます。
  
 
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