JRCCでは、有害大気汚染物質、PRTRなど化学物質の自主的な排出削減に取り組んできました。また、VOC排出量の削減にも取り組み始めました。
  
有害大気汚染物質削減への取り組み
 日化協では、1995年度より2期にわたる自主管理計画を実行し、優先取り組み12物質の削減に取り組んできました。2001年度を初年度とする第2期計画では、2003年度削減目標平均30%に対し、排出実績は各物質で45〜79%と高い削減率を達成しました。
 この成果は、2004年度に経済産業省からも目標を上回る削減を達成し大きな成果を上げたと高く評価されました。
 優先取り組み12物質は、PRTR 対象物質でもあり、今後は、PRTRの取り組みに含めて実施していく予定です。

優先取り組み12物質とは
 中央環境審議会において低濃度であっても長期的な摂取により健康への影響が生ずるおそれがある有害大気汚染物質の中から「優先取り組み物質」として22物質がリストアップされました。このうち発がんの可能性や、一定以上の生産輸入量があること、環境中からも検出されていること等を勘案して選んだのが12物質です。事業者が自主的管理を行う物質で、化学業界はニッケル化合物に替えてエチレンオキサイドを加えています。
PRTR への取り組み
 日化協では、1992年に諸外国のPRTR 制度を調査し、国内でも13物質のパイロット調査を開始しました。1994年に調査指針と算定要領を定め本格的な調査を開始するとともに、この結果を経済産業省で公表しました。調査対象物質は順次追加し1998年からは284物質、2000年以降は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR 法)で指定された354物質を合わせ、480物質を調査対象としています。
 JRCC 会員におけるPRTR 法指定物質および日化協の自主的な調査物質の2000〜2004年度の排出量を図示しました。
 2004年度のPRTR 法指定物質(354物質)の排出量は、18,500トンであり、2000年度比で、54%削減しました。排出量の内訳は、大気への排出88%、水域への排出12%、土壌への排出0%でした。
 また、日化協の自主的な調査物質(126物質:480物質のうち、法指定物質を除く)の排出量は、38,000トンであり、2000年度比で25%削減しました。排出量の内訳は、大気への排出が最も多く82%、水域への排出18%、土壌への排出0%でした。
 会員においては、調査結果を基に、有害物質の漏洩防止、回収・リサイクル率の向上、代替物質への転換等を積極的に推進し、環境への排出量のさらなる削減に努めています。
   
なお、主要な10物質の詳細データは、下記のホームページに掲載しています。
http://www.nikkakyo.org/organizations/jrcc/report/2005/data.html
PRTR 法
 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法とは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境(大気、水、土壌)への排出量および廃棄物に含まれた事業所外への移動量を、事業者が自ら把握し国に対して届け出るとともに、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計し、公表する法律です。
VOC 排出量削減への取り組み
 VOC の排出削減への取り組みは、大気汚染防止法により規制的処置、自主管理のベストミックスとして実施されることになりました。
 JRCCでは、会員それぞれが法規制へ対応するとともに、自主管理計画を策定してVOC の削減に取り組む予定です。
VOC(揮発性有機化合物)
 VOC(volatile organic compounds)とは、揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物の総称であり、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質があります。これらは、人の健康への影響が懸念されている「浮遊粒子状物質」および「光化学オキシダント」を発生させる原因の一つと考えられています。
大気汚染・水質汚濁防止への取り組み
 1970年代以降、公害防止の観点から大気汚染物質や水質汚濁物質の排出量を大幅に削減してきました。1995年以降も、JRCC会員は法規制値より厳しい自主管理基準を設定し、また自治体との協定を遵守し、排出量の削減、基準値の維持に努めてきました。
 会員の主要な大気、水質への環境負荷項目を下記のグラフにまとめました。排出総量は生産量やデータ提出会社の構成変動により影響されるため、売上高に対する排出量の割合を排出原単位という指標でも整理していますが、会員各社の努力により、原単位は着実に改善されています。
 また会員各社は2001年度より水質の環境負荷として全りんおよび全窒素の排出削減に取り組んできました。データ提出会社数がほぼ同じ2002年度と比べて、全窒素を約6,000トン、全りんを約160トン削減しています。
土壌・地下水汚染について
 JRCC 会員各社では、2003年に施行された土壌汚染対策法に基づく、または自主的な調査・対策を進めています。
  アンケートに回答のあった91社のうち、2004年度に土壌・地下水の汚染調査を実施したのは58社(64%)、計108カ所で、このうち23社の計30カ所(28%)で基準値を超えた汚染が発見されました。
 調査実施理由は、自主的なものが70%と最も多く、法または条例に基づく調査は18%でした(複数回答、上段グラフ)。また、調査対象物質については、土壌汚染対策法に定められた物質以外も調査した例が18件ありました。
 また2004年度には、過去に発見された汚染を含めて30社45ヶ所で汚染対策を実施しました。具体的な対策の方法は下段のグラフの通りでした。
PCB について
 アンケートへの回答91社のうち77社(85%)が、PCB 廃棄物(PCB またはPCB を含有する機器等の廃棄物)を保有・管理しています。2004年度中にPCBの処理を開始した会員は2社でした。今後、国によるPCB 廃棄物処理事業の本格稼動により、処理を進める会員が増加すると思われます。
会員の自己評価
環境保全
 全体の傾向は昨年と同じく、著しい環境側面、危険・有害要因の特定、点検・監視と是正および予防措置の項目は約9割がほぼ満足できる状況です。またコミュニケーションについても、改善の傾向が見られますが、さらなる向上が必要です。