2005年は、京都議定書発効など地球温暖化防止に向けて大きな動きのあった年でした。化学産業が供給する化学製品は、その生産活動で温室効果ガスを発生しますが、他産業の製品(自動車や家庭電気製品等)の省エネルギーに貢献している一面もあります。JRCC会員は、設備・機器のエネルギー効率の改善、運転方法の改善などにより、省エネルギーとCO2排出抑制に努力しています。また、省エネルギー製品の開発・提供と温室効果ガスの削減などを通じて地球温暖化防止対策に積極的に取り組んでいます。
   
省エネルギーの目標と実績
 化学産業界は、1996年に日本経団連環境自主行動計画に基づき、2010年度までにエネルギー原単位を1990年度の90%にする目標を設定しました。会員は2002年度にその目標を前倒しで達成しましたが、その後も着実にエネルギー原単位は改善し、2005年度実績は、1990年度比86%になりました。このエネルギー原単位の向上により、生産は1990年に比較して27%増加しましたが、エネルギー使用量は9%増に抑制することができました。

省エネルギー対策の実績と内容
 日化協の「環境保全に関する自主行動計画」の2005年度フォローアップ結果では、省エネルギーおよびCO2削減の事例数は402件あり、投資額は256億円、エネルギー削減量は、540千kl(原油換算)となっています。省エネルギー対策事例の内訳の中で、特に大きい割合を占めるのが、設備・機器効率の改善と運転方法の改善であり、全体の約7割を占めています。

CO2排出の抑制努力
 会員の2005年度のCO2排出量は前年度比で約1%削減となりました。また、1990 年度比では、9.6%増加しましたが、その要因を分析すると、下記となります。
  2005年度 2004年度
生産量の増加に起因する分 26.8% 24.7%
化学企業努力分(省エネ等による減少) △17.4% △14.8%
燃料、電力のCO2排出係数の変化分  0.2% 1.3%
 (計) 9.6% 11.2%

温室効果ガスの排出削減
 日化協はHFC等3ガスについて自主行動計画を定め、その排出量削減に努めています。2005年度の排出量は基準年の1995年度比で11%と、大幅に減少しています。CO2排出量(エネルギー起源)と合わせた温室効果ガス総量(CO2換算値)は基準年度比で15%の削減となっており、1999年以降、削減傾向が続いています。
 なお、日本経団連の2004年度データでは、化学産業のCO 2排出量は製造業の17%を占めています。

 
会員の取り組み事例
バイオマスを原料として利用
関西ペイント(株)
 従来の化石原料を使わない、トウモロコシを原料にした植物系樹脂塗料を、シャープ(株)と共同開発し、液晶テレビのスタンド部の塗料に使用されています。バイオマス起源の原料なので、燃焼してもCO2は光合成で植物に固定・循環され、地球全体の大気中のCO2増加に寄与しない、いわゆるカーボンニュートラルであるため、地球にやさしい塗料です。
東レ(株)
 トウモロコシなどを原料とした植物系プラスチックを富士通(株)、(株)富士通研究所と共同開発し、ノートパソコンの材料として使用されています。従来の石油系樹脂に比較して、使用材料の約50%が天然素材であり、生産から消費されるまでのライフサイクル全体で、約15%のCO2排出量が削減されます。
CO2ガスの中和利用
積水化学工業(株)
 滋賀栗東工場では、アルカリ性の高いボイラ排水の中和処理に際して、水に溶けると酸性になるボイラ燃焼排ガス中のCO2の特性を生かした中和プロセスを開発・導入しています。大気に放出されていたCO2ガスを年間700トン削減し、中和用塩酸の使用はほとんどなくなりました。