削減計画
 環境省の「平成21年版環境・循環型社会・生物多様性白書」によると、ここ数年全国の産業廃棄物の総排出量はほぼ横ばいで最終処分量は減少し、2006年度末の産業廃棄物最終処分場の残余年数は全国平均で7.2年と前年度よりやや改善されましたが、循環型社会構築のために産業廃棄物の削減をさらに進めていくことが大切です。
 日化協では、日本経団連環境自主行動計画に従った目標(2010年度の最終処分量を1990年度比88%削減)を掲げ、取り組みを進めています。JRCCでは発足時より、会員に対して年度・長期計画目標も織り込んだ産業廃棄物の削減目標を自主的に定めるよう基準を設定し、JRCC会員は目標達成に向けて削減計画を進めています。
発生量、資源有効利用率、最終処分量の取り組み状況と実績
 
 日化協会員は分別の徹底や処理装置の設置・改善、また製造工程への回収や再利用などによる、発生源での廃棄物発生量削減の取り組みを進めています。2008年度の産業廃棄物発生量は1990年度比で41%削減(2007年度比21%削減)となりました。また、再資源化の取り組みを積極的に行い、資源有効利用率(資源有効利用量の廃棄物発生量に対する割合)は1990 年度で26%でしたが2008年度には57%まで向上しました。
  日化協会員の2008年度の最終処分量は235千トンで2007年度より22千トン減少し、1990年度比86%削減となりました。2010年度は1990年度比90%削減となる見込みです。会員へのアンケートによると、ゼロエミッションの取り組みを「全て達成」および「一部で達成」とした会員は生産部門で約6割、研究開発部門で約3割、オフィス部門で約1割です。ゼロエミッションの定義は7割以上の会員が独自に最終処分率や再資源化率に関して定めています。
  また最終処分量の削減とともに、処分の適正管理も年々強化してきています。産業廃棄物管理表(マニフェスト)の交付回収確認や最終処分地の現地視察などを行っています。
 
循環型社会の構築に向けて
 JRCC会員は自社から発生する廃棄物削減のほか、社外から廃棄物を受け入れ、独自のリサイクル技術により循環型社会構築に貢献しています。こうしたリサイクルの例としては、廃タイヤ等の燃料としての利用、汚泥等のセメント原料としての利用、アルミ缶、廃プラスチックの回収と再資源化、廃金属のリサイクル、廃液からの塩素および臭素のリサイクル、廃テレビガラスの再原料化、化学繊維類のケミカルリサイクルによる再原料化、梱包材のリサイクルや再資源化等があります。
 
 
会員の取り組み事例

フェノール樹脂ケミカルリサイクル技術

住友ベークライト(株)
 住友ベークライトのフェノール樹脂ケミカルリサイクル技術は、超臨界流体技術を応用することで、三次元に架橋したフェノール樹脂製品を10〜20分間の短い反応時間で完全に分解して、化学原料として再生レジンを高収率で回収することが可能です。再生レジンを原料とした再生製品は、バージン製品と同等の特性・性能を保持しています。静岡工場に年間数百トンのフェノール樹脂を処理することができる実証プラントを建設し、早期の実用化・事業化を目指した量産開発を進めています。この技術は学会でも発表しており、学術奨励賞やポスター賞などを受賞し、社外でも高い評価を受けています。

廃家電プラスチックからの発泡性ビーズ「エプスレムERX」

積水化成品工業(株)
 積水化成品工業では39年前から発泡スチロールのリサイクルに積極的に取り組んできました。このたび、発泡スチロールのみならず、テレビや冷蔵庫などの廃家電樹脂から発泡性ポリスチレンビーズを製造する技術を確立し、「エプスレムERX」として実用化することに成功しました。この「エプスレムERX」を家電製品の包装材として使用することにより、家電製品⇒消費者⇒廃棄⇒廃家電処理工場⇒「エプスレムERX」⇒家電製品の流れで循環し、クローズドリサイクルシステムの構築に大きく貢献します。この商品は、バージンの発泡スチロールに比べCO2を20%削減でき、クリーン・ジャパン・センター会長賞を受賞しました。

固体酸触媒を用いた低環境負荷THF開環重合プロセス

三菱化学(株)
 三菱化学は、石油化学プロセスにおける省資源・省エネルギーを推進していくために、高効率な触媒や製造プロセスの開発を進めています。
 その成果の一つが「固体酸触媒を用いた低環境負荷THF(テトラヒドロフラン)開環重合プロセス」です。
 これは、伸縮性に優れた繊維原料として近年需要が急増しているポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)の製造プロセスに用いられる技術で、PTMG1kgの生産につき0.15kgの廃棄物削減効果が見込め、2000年から開始した商業生産でも、その効果が実証されました。