■RCニュース概要
■ニュース秋季号 No63
VOICE:岩澤 康裕
化学人材育成プログラム協議会の第1回シンポジウムを開催
from Members
第35回 日化協安全賞が決定し安全シンポジウムを開催
RCの現場を訪ねて:住化スタイロン ポリカーボネート(株)
RCの現場を訪ねて:(株)ニチノーサービス
地域対話を開催:第4回 新潟北地区地域対話
リスクコミュニケーション研修
APRCCとAPRO会議・RCLG会議
2011年度の地域対話
RC報告書の発行及び報告会について
日化協との完全統合に向けて
JRCCだより

 
第59回
新しい技術によるプロセスの改善を通じて、環境に配慮したものづくりを実現していきたいと考えています。
住友精化株式会社
執行役員 知的財産、品質保証担当、RC 室長
長田 学さん
吸水性樹脂が事業の柱
― 住友精化の特徴を聞かせてください。
長田 当社は1944年に住友化学工業(株)と(株)多木製肥所の共同出資により、住友多木化学工業(株)という肥料メーカーとして設立されました。その後、別府化学工業(株)、製鉄化学工業(株)と社名を変更し、1989年に住友精化(株)となり現在に至っています。肥料事業から徐々にファインケミカルにシフトしていき、1980年代初めには吸水性樹脂事業がスタートしました。2011年3月期の売上高は646億円、そのうち約半分を吸水性樹脂事業が占め、化学品事業が3割弱、ガス・エンジニアリング事業が2割弱となっています。現在の輸出割合は4〜5割ですが、将来的には〜7割まで伸ばしたいと考えています。別府工場、姫路工場、千葉工場の3拠点体制で、従業員は連結ベースで1,081人です。
― 吸水性樹脂の主な用途としては、紙おむつが浮かびますが…。
長田 そうですね。吸水性樹脂の生産は国内とシンガポール、ヨーロッパ(委託)の3拠点体制としていますが、国内市場は成熟しており、中国、インドなどの今後成長が見込まれるアジアから世界市場へ展開を図っています。一方、他の分野での事業拡大も進めており、国内の他、台湾、韓国、中国にガス事業の拠点を置き、電子材料向けのエレクトロニクス・ガスの伸長に注力しています。化学品事業分野では有機合成、ポリマー重合、微粒子化等の基盤技術を活かし、高機能品の拡充を図っています。
― 企業理念、経営方針は?
長田 住友の事業精神に基づいて営業活動を行うことを旨とし、「当社グループは、社会との共存共栄を基本方針とし、化学の分野で世界に通じる独創的な技術を開発し、特色のある質の高い製品を国内外へ供給することにより、社会に貢献する」という経営方針を掲げています。
   
物流緊急訓練
言葉よりも実質的な活動
― レスポンシブル・ケア導入に至る経緯を教えてください。
長田 1995年、JRCC発足と同時に加入しました。当時は設立に関わった大手企業を範とし、勉強させていただくという考え方でしたね。ただし、導入時はレスポンシブル・ケアという言葉は一切、用いませんでした。ちょうどISOの認証取得を進めていた時期でもあり、混乱を避けるといった意味もあったと思います。以前から環境・安全活動においては年度計画を策定しており、それに基づいてPDCAサイクルを回していくという形を採りました。このような方法で進めたことにより、実質的な活動がスムーズに浸透、定着していったと感じています。現在のRC委員会、RC室といった名称も2005年頃に変更したものです。
― 活動内容に変化はありましたか。
長田 PRTRやイエローカード、MSDS等、JRCCからの情報提供、指導により、活動が充実したと思います。パフォーマンスデータを積み上げることで目標・計画の達成度合いも判り易くなりました。自主管理活動と言いながら、JRCCに引っ張っていただいた部分は多々あると思っています。また、それまでの環境保安部と工場を中心とした活動から、社長自らのトップダウンによる全社的な展開に移行したことも大きな変化でしたね。
― 苦労した点は何ですか。
長田 一番大変だったのは、PRTRに関する数値データの集約でしょうか。かなり手間の掛かる作業でしたが、当時の環境保安部が技術部門のサポートを受けながら極力、現場に負担を掛けない形で進めました。その他にも文書化等で工場の環境・安全に関わる部署は、ある程度作業が増えたと思いますが、レスポンシブル・ケア活動によって製造現場に大きな負荷が掛かるということはなかったと記憶しています。
目標・計画にもトップの意思が
― 数値目標の達成度はいかがですか。
長田 PRTRにおける優先削減物質については、経営側の理解を得ながら計画に沿って進めたことで達成できました。一方、省エネルギーや廃棄物削減等に関しては、ある程度、体制が固まるまで、それほど高い目標は掲げませんでした。勿論、法規制は遵守しますが、それ以上の部分は業界内の最低限の指標をクリアすることを念頭に置いていましたね。最初は先進的な会員企業の後方を追従することから始め、その間にかなり体力も付いたので次のステップに移行できたと思います。
― 研究開発部門における活動は?
長田 廃棄物削減等における手法の改善、またPRTR対象物質に関しては原則不使用といった要請を行いました。当初はなかなか徹底されませんでしたが、現在は定着しています。
― レスポンシブル・ケアによる特筆すべき成果はありますか。
長田 トップが環境保全、保安防災等の重要性を今まで以上に認識し、設備投資などが経営判断に基づいて迅速に行われるようになりました。目標・計画の策定にも、トップの意思が反映されています。それに伴い、従来あまり意識していなかった物流安全といった分野にも目を配るようになり、現在は運送会社に対する教育・訓練も実施しています。パフォーマンスについては、エネルギー使用原単位を大幅に低減することができました。また対外的には、日本政策投資銀行からDBJ環境格付に基づく融資を受けるに当たり、環境経営度で最高ランクの評価をいただきました。当社の活動が外部からも認められたということで、従業員の励みになっていると思いますね。
従業員・地域住民の安全を確保する
― 社会とのコミュニケーションについて聞かせてください。
長田 当初はJRCCが主催する地域対話で事例発表を行う程度でしたが、最近は別府、姫路の両工場で防災訓練等を地元の自治会の方々に見ていただき、その後に意見交換会を開催しています。最初は意見交換も乏しいところでしたが、今では生産品目や設備、防災体制等に興味を持たれているようで、当社に対する理解も深まりつつあると感じます。
― 東日本大震災以降、大規模災害対策が急がれていますが…。
長田 現時点で阪神・淡路大震災レベルに耐えられるような設備の耐震化への備えを進めていますが、それ以上の災害にも備えられるよう見直しを進めています。想定外という部分がないように、法改正等を待つのではなく、従業員・地域住民の方々の安全を確保するための体制を整備しなければならないと考えています。
― 今後の目標は何ですか。
長田 地域・社会から信頼を得られる会社にしていくために、省エネルギーやCO2排出削減、廃棄物削減、労働安全、保安防災といった基本的な活動を地道に継続していきたいと思っています。更に、新しい技術によるプロセスの改善を通じて、環境に配慮したものづくりを実現することが目標です。
― 日化協レスポンシブル・ケア委員会に対する要望等はありますか。
長田 会員交流会には当社も積極的に参加し、非常に役立っています。JIPSやREACH等、一社では把握し難い様々な動向を明確に発信していただけるのも有難いですね。今後も種々の情報提供を継続・充実していただきたいと思います。
地域の方々による防災訓練見学
   
意見交換会