■RCニュース概要
■ニュース冬季号 No64
VOICE:小野 峰雄
日本RC協議会と日本化学工業協会の統合にあたって
from Members
RCの現場を訪ねて:日産化学工業(株)小野田工場
RCの現場を訪ねて:花王(株)鹿島工場
地域対話を開催:第8回 山口西地区地域対話
地域対話を開催:第8回 川崎地区地域対話
会員交流会
会員交流勉強会
大阪・東京 消費者対話集会開催
個別対話集会・地域対話補完集会
RC検証について
安全表彰の表彰式
JRCCだより

 
第60回
地道な活動を継続し、経営理念・方針を実現することが目標です。
テイカ株式会社
代表取締役 専務取締役
古城 康治さん
酸化チタンで事業を拡大
― テイカの歴史、現状を聞かせてください。
古城 当社は1919年に過リン酸肥料の製造・販売を目的とする帝国人造肥料(株)として設立されました。当初、大阪市船町の大阪工場で創業しましたが、1942年に岡山工場を建設し社名を帝国化工(株)と変更しました。これが現在の社名の由来であり、1989年にはテイカ(株)に改称しています。戦後、硫酸関連技術を基盤に、1951年に岡山工場で酸化チタンの製造を開始し、大阪工場では1961年に界面活性剤の製造を始めました。以来、時代や社会のニーズに合った様々な化学工業薬品を開発し、それら製品の製造・販売に努めてきました。酸化チタンは塗料やインキの顔料としてスタートしましたが、現在では微粒子酸化チタンや有機の表面処理剤という形でUVカット化粧品材料やトナー原料用として用途を拡大しています。表面処理製品については1996年に長船町に岡山工場の分工場を、2006年には赤磐市に熊山工場を新設し現在当社の稼ぎ頭となっています。その他にも、光触媒用酸化チタンや赤外線反射酸化チタン、電子・電池材料など、環境・エネルギー・健康を意識した新製品を次々と開発し、時代の先端分野に活躍のフィールドを拡げています。従業員は500名、売上高は単体で320〜330億円、酸化チタン関連が6割弱、その他化学品が4割強といったところです。
― 経営理念・方針は?
古城 「テイカグループは、人間性尊重と相互信頼を基本に、化学を基盤とした創造的技術を駆使して顧客と共に発展し、広く社会に貢献することを目指す」という理念の下、全員参加の経営・社会貢献と企業価値の増大・創造性の発揮・地球環境への調和・企業倫理の徹底・情報の開示という6項目の方針を掲げて事業を展開しています。
   
地元の小学生と保護者の方による工場見学
(岡山工場)
地域とのコミュニケーションに対する意識が高まった
― レスポンシブル・ケア導入前後の状況を教えてください。
古城 以前から本社に環境管理部、各工場に環境課を設置し、共同で環境監査を実施していました。1994年にはISO9002の認証を取得し、95年のJRCC発足と同時に加入して環境管理部がレスポンシブル・ケア事務局となり活動を開始しました。
― 現場の反応はいかがでしたか。
古城 工場では1年前にISO9002を取得したばかりで、文書化や更新審査等で苦労していました。更にRC監査が加わったので、現場が負担を感じていたのは事実でしょうね。レスポンシブル・ケアには抽象的な概念が含まれているので、具体的に何をすれば良いのかという戸惑いはあったと思います。ただし活動の導入により、その後のISO14001の認証取得がスムーズに進んだというメリットもありました。現在は各工場で理念・活動が浸透・定着し、RC監査とISO監査の2本立で管理を徹底しています。
― 活動を始めて、変化した点はありますか。
古城 岡山工場は当社単独の立地なので、周辺地域には特に配慮して公害防止に力を入れてきました。しかしコミュニケーションに関しては、あまり積極的に取り組んでこなかった点は否めません。レスポンシブル・ケアの導入により住民の方々に会社、工場の活動を理解していただこうという意識が高まったことは、大きな変化であると感じています。現在は地元の小学生・保護者の方々の工場見学受入れ、交通安全パトロールといった活動に協力しています。環境・安全活動においては、以前は各工場が独立した形で行っていましたが、全社的に統合され効率的に運用できるようになった部分もあると思います。
燃料転換によりCO2 排出削減
― 具体的な成果は?
古城 廃棄物発生量やCO2 排出量は、工場の規模や取扱製品の関係で岡山工場が圧倒的に多いのが現状です。レスポンシブル・ケアの観点だけではなく、コスト削減の面からも廃棄物の減量化、リサイクルを推進しています。10数年前に比べ発生量は約20%減少し、最終処分量は半分程度になりました。一方、CO2 排出に関わる燃料消費量については90年以降、岡山工場では大型の増設が続いたため明らかに増加しています。現在、ガス会社が姫路から天然ガスのパイプラインを敷設する計画を進めており、燃料転換を含めてCO2 削減の努力を継続していきたいと考えています。大阪工場、本社においても省エネルギーには力を入れており、大阪工場においては既に燃料転換を実施済みであり、全社を挙げてCO2 削減に取り組んでいます。
― 震災発生により、保安防災対策の重要性が再認識されていますが…。
古城 数年前に岡山工場が台風の被害に遭い、高潮で全ての製造設備が停止に追い込まれるという経験をしました。それ以来、危機管理対策として堤防の増強や防災訓練に取り組んでいます。環境・保安防災に関する投資は、企業の存続に必要不可欠なものだと捉えています。
― 研究所におけるレスポンシブル・ケア活動について聞かせてください。
古城 大阪・岡山の両研究所とも工場の敷地内に立地しており、基本的な活動内容は製造部門と同様です。研究開発部門は様々な薬品を使用するので、特に化学物質管理の徹底に注力しています。開発段階から毒劇物は極力用いない方針であり、またMSDSについても研究所が管理し適切な情報提供に努めています。
― 環境対応製品には、どのようなものがありますか。
古城 光触媒用酸化チタンは脱臭、防汚、抗菌、空気清浄、大気・水質浄化など多方面への用途が見込まれています。赤外線反射酸化チタンは遮熱塗料に使用され、省エネルギーに寄与しています。更に、クロムや鉛を含まない無公害型防錆顔料等も製造しています。
長期経営ビジョンを達成するために
― 労働安全衛生に関する活動は?
古城 団塊世代の退職に伴い工場の作業員が減少傾向にあるので、各人の多能化を図っています。いろいろな仕事ができるという裏にはリスクも潜んでいるので、安全教育の充実を図っています。ヒヤリハット等の事例は工場間、本社も含めて共有し、教育・研修に活用しています。最近、休業災害は発生していませんが、不休災害がなくならないのが悩みですね。ほとんどがヒューマンエラーに起因するので、意識改革と設備の安全化の両面から対策を講じているところです。
― 現在、力を入れている活動は何ですか。
古城 当社は2019年の創業100周年に向けて長期経営ビジョン(チャレンジ100)を策定し、売上高・利益率の向上を目指しています。その前提となる基盤事業の安定、成長事業の強化には省エネルギーや廃棄物削減、事故・災害の防止が必須であると考えています。また営業部門では原材料のMSDSを確実に取得し、製品のMSDSには最新情報を記載して確実に配布すること、物流部門においてはモーダルシフトの促進に注力しています。
― 今後の目標を聞かせてください。
古城 これまでのレスポンシブル・ケア活動の中で実践してきた取り組みを地道に継続し、経営理念・方針に掲げているテーマを実現したいですね。それが企業としての社会的責任を果たすことに繋がると考えています。
― 日化協レスポンシブル・ケア委員会に対する要望があれば…。
古城 化学物質管理に関する世界的な動向について、引き続き迅速な情報提供をお願いします。また、レスポンシブル・ケアの理念、活動内容の認知度を向上するという課題に取り組んでいただきたいと思っています。企業の担当者が、一般の方々に説明するためのノウハウを確立していただければ有難いですね。
通常の顔料用酸化チタン(左)、赤外線反射酸化チタン(右)を用いて「薄鋼板製倉庫」に塗布した場合のサーモグラフの結果です。赤いほど温度が高く、青いほど温度が低いことを示します。赤外線反射酸化チタンの遮熱効果があることが判ります。
   
大正区自衛消防協議会技術発表会
(大阪工場)