目次
RCを知っていますか?
発行にあたって
環境・安全に関する日化協基本方針
報告書2011のトピックス
RC委員会の運営
RC委員会活動計画と実施状況
環境保全(省エネルギー・地球温暖化防止対策)
環境保全(産業廃棄物削減)
環境保全(化学物質の排出削減)
保安防災
労働安全衛生(労働災害防止に向けた取り組み)
労働安全衛生(安全表彰・シンポジウム)
物流安全
環境・保安投資
会員のマネジメントシステム
化学品・製品安全
会員の社会対話
RC委員会の活動(社会との対話)
会員交流
国際活動
RC検証
RCに期待する
JRCC協議会会員
注文書

 
 
 
山根 香織
(主婦連合会 会長)
 東日本大震災による被災地の復旧・復興が懸命に取り組まれていますが、福島原子力発電所事故の収束もままならず、日本はたいへんな時代を迎えています。私たちは、震災と放射能汚染問題への対応が消費者目線で迅速・適切に行われるように国などへの要望を続けていますが、情報提供や対策が十分に進まず不安や不信が渦巻いています。
 リスクを正しく理解して適切に行動するには、何より十分でわかりやすい情報を得ることが重要で、その上で自ら考え判断していくことが求められます。しかし今まで日本では情報を提供する側も受ける側も、そうした教育や訓練の場が少なく、調整役となる人や組織も、その必要性が言われながらなかなか充実・強化をされずに来ました。リスクコミュニケーションという言葉を聞くようになってだいぶ経ちますが、リスクを正しく知り、共有し、信頼し合い、ともに考えるといった成熟した場や時間が今ほど求められる時はありません。皆で社会に参加し、社会全体の幸せを考えようという「消費者市民社会」の重要性も共有されるようになってきました。
 地球サミットから20年にあたる今年には、「国連持続可能な開発会議(リオ+ 20)」が開催されるとのことで、主婦連も準備委員会に参加しています。リオ宣言の第4 原則は、「各国は、深刻な環境悪化を引き起こす、あるいは人間の健康に有害であるとされているいかなる活動及び物質も、他の国への移動及び移転を控えるべく、あるいは防止すべく効果的に協力すべきである」とされています。震災、原発事故で多くの難題を抱える日本ですが、会議は本当の持続可能性について発信する機会となるのではないでしょうか。
 昨年は世界化学年でしたが、様々な催しなどを通じて子ども達に化学への夢や希望が広がったでしょう。そう信じたいと思います。これからも地球環境を学習や対話を通して皆で考え、安全・安心が高まるよう、努力しなければなりません。今こそレスポンシブル・ケア活動がより積極的に展開され、地球と地球にくらすすべての生き物の今と未来のために、大きく役割を果たされることを期待しています。
川島 信之
(公益社団法人日本化学会
常務理事)
 2011年は世界化学年でした。日本化学会と日本化学工業協会は互いに協力し様々なイベントを開催しました。世界中97ヶ国で開催された公式登録イベント1,372(12月16日現在)の中で、日本は世界で3 番目(139件)、おそらく、数十万人の方に参加いただいたと思います。RC活動は、社会とのコミュニケーションが柱の一つとなっており、世界化学年を通してその役割を果たせたと思います。
 日化協は、2011年7月、温室効果ガス削減における化学産業の役割をより具体的に示すために、国内における化学製品のLCA評価を発表しました。社会全体への化学の貢献を具体的かつ定量的に示したことの意義は非常に大きいでしょう。すでに計画されているように、今後、評価の対象となる製品や技術を拡大し、より分かりやすく理解してもらうための活動を続けることが重要です。
 Nature誌は、世界化学年が始まった2011年1月6日号で、“化学は他の専門分野の発明や発見を可能にする中心的存在”、すなわち化学はセントラルサイエンスであると表現しています。化学に携わる者はそのように思っていますが、実は外からは化学は頼めば成果が出てくるもの、利用できるものとみられているようです。化学工業も同じではないでしょうか。調達できるもの、下支え、縁の下の力持ちではなく、“セントラルインダストリー”として、産業全体をリードしていく気概と責任が求められていると思います。
 アナン第7代国連事務総長は、人類の最優先課題は、「WEHAB + P」、すなわち、W(水)E(エネルギー)H(健康)A(農業)B(生物多様性)とP(貧困)をあげています。3.11以降の日本人の意識や行動パターンが大きく変化したことを念頭に置き、科学技術がその課題解決に向けたイノベーションに取り組む中で、RC 活動の重要性は増していきます。我が国においても、学会と化学工業会がオールジャパンとして連携することが大事であることは言うまでもありません。
 日化協は、1995年以来、我が国のRC 活動をリードしてきておられます。このような活動がマンネリ化やパターン化に陥らないように、Responsible Careは、I amresponsible. であり、I care. であるという原点を常に見据えていくことが必要です。業界や企業という組織を超えて個人が真摯に取り組んでいくことが重要だと思います。